骨粗鬆症治療と治療薬

2023年2月14日

日本には、およそ1280万人の骨粗鬆症患者さんがいます。高齢化の進行と共に、骨粗鬆症の患者さんは年々増加傾向です。
今回、骨粗鬆症と治療薬について解説いたします。

1.骨粗鬆症とは?

骨粗鬆症は、骨の密度が低下して脆くなり、骨折しやすくなる病気です。
骨は、骨を溶かす「骨吸収」と新しい骨を作る「骨形成」をつねに繰り返し、骨を健康的に保っています。加齢などの影響で骨吸収と骨形成のバランスが崩れ、「骨吸収」のほうが上回ってしまうと、骨が脆くなるのです。

骨粗鬆症は60代ごろから増えてきますが、男性よりも女性の方が発症しやすいことが知られています。女性の骨粗鬆症には、閉経が関与していることが多いためです。
女性ホルモン「エストロゲン」には、骨吸収を緩やかにする作用があります。
閉経によってエストロゲンが減少するため骨吸収が進み、女性は閉経後10年ほどで急激に骨密度が低下してしまうのです。

そのほか、もともとの骨密度食生活の偏り運動不足日光に当たる時間が短い喫煙など、さまざまな要因が絡み合い、骨粗鬆症を発症します。

骨粗鬆症という病気自体で痛みを生じることはありませんが、骨粗鬆症が進行すると以下のような症状や状態に悩まされてしまうかもしれません。

  • 骨折による痛み
  • 骨折などをきっかけに寝たきりとなる危険性が1.8倍
  • 便秘、胸焼けなどさまざまな症状

2.軽度〜中等度の骨粗鬆症に使用する薬

まずは、軽度〜中等度の骨粗鬆症の方に使用する骨粗鬆症治療薬をご紹介します。

軽度(骨密度71%以上)の方は、骨を丈夫に維持するために不足している成分補います。
カルシウムビタミンDビタミンKが代表的です。
そのほか、女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きをする「ラロキシフェン」「オステン」を使うこともあります。

中等度(骨密度61〜70%)の方は、骨吸収を抑える薬が中心です。
骨吸収を担う「破骨(はこつ)細胞」を壊す「ビスホスホネート系」という種類の薬をよく使います。
飲み薬と注射薬が何種類もあるので、個人に合ったものを選びやすいです。
新たな破骨細胞が作られないようにする「プラリア」は注射薬で、半年に1度で長く効きます。

3.骨密度60%以下に使用する注射薬

3-1.新しい治療薬「オスタバロ」

骨粗鬆症には既にさまざまな治療薬がありますが、2023年1月に新薬「オスタバロ」が発売されました。オスタバロについてご紹介します。

オスタバロは骨形成を活発にする

オスタバロは、新しい骨を作りだす骨芽細胞を活発に働かせることで、骨形成を促します。
骨粗鬆症は、骨形成に比べて骨吸収が盛んな状態のため、軽度〜中等度の方に使用する骨粗鬆症治療薬の多くは、骨吸収を抑えてバランスを取ります。
一方オスタバロは、骨形成を促すことでバランスをとり、骨量を増やす薬です。骨折の危険性が高い方におすすめされます。

3-2.骨形成を促す薬の使い分け

オスタバロと同様に骨形成を促す骨粗鬆症治療薬として「テリボン(テリパラチド)」「フォルテオ」「イベニティ」があります。すでに骨折のある方や、骨折の危険性が高い方にはこれらの薬を使用することが多いです。

オスタバロ
テリボン
イベニティ
投与頻度 毎日
(自分で投与)
週に1回
または半量2回
月に1回
治療期間 18か月まで 24か月まで 12か月まで
投与方法 皮下投与

「テリボン」は椎体(背骨)の骨折予防効果に優れた薬です。
週に1回または半量を週2回の投与なので、「うっかり忘れてしまう」「打ったかどうかわからなくなった」といったトラブルをなくすため、記録をつけましょう。
毎日、自分で投与するタイプの「オスタバロ」も、椎体の骨折に対して予防効果が優れています。
「オスタバロ」は、専用の注射器が画面で使い方を案内してくれるだけでなく、自動で薬を注入してくれるので、どなたでも簡単に扱えます。
「今日投与したかどうか」も画面に表示されるため、投与したかどうか不安になったときにも安心です。
「イベニティ」は、ほかの薬剤とは異なり、椎体だけでなく大腿骨(太ももの骨)の骨折予防効果もあります。
そのため、大腿骨の骨折がある方にはイベニティを選ぶことが多いです。

4.一番大事なことは定期的な検査予防です

骨の健康を保つためにも定期的な検査をして、自分の骨の状態を把握しておきましょう。
当院では、6か月に1回の骨密度測定血液検査を推奨しております。
もし痛む部位があれば、はやめにレントゲンで画像診断を行いましょう。

骨折を予防し、元気に過ごせる時間が長くなるよう、骨粗鬆症の治療をおこなっていきましょう。

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